うつ病

失恋したり、友達とケンカしたり、仕事で失敗したり……毎日の生活の中でショックな出来事は、誰にでもあること。そんな時は誰でもつらく、悲しい気持ちになりますが、普通は数日もしたら、少しずつ前向きな気持ちを取り戻せるものです。
ところが何週間も、しかも一日中ずっと、そのような状態が続いているとしたら、それはもしかしたら「うつ病」なのかもしれません。気になる症状が続くときは、専門家に相談することが必要です。
うつ病は、脳のエネルギーが欠乏した状態となる気分障害の一つです。うつ病にかかってしまうと、気分の落ち込みや意欲の喪失に加えて、思考力低下、気力の減退、食欲の異常、睡眠障害などの症状が重なってあらわれます。
一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった精神症状とともに、眠れない、食欲がない、疲れやすいなどの身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が生じている場合、うつ病の可能性があります。
・・・厚労省:みんなのメンタルヘルス
うつ病は、気分が強く落ち込み憂うつになる、やる気が出ないなどの精神的な症状のほか、眠れない、疲れやすい、体がだるいといった身体的な症状が現れることのある病気で、気分障害の一つです。

気分障害は大きく「うつ病性障害」と「双極性障害(躁うつ病)」に分けられ、いわゆる「うつ病」はうつ病性障害のなかの「大うつ病性障害」のことです。うつ病では気分が落ち込んだり、やる気がなくなったり、眠れなくなったりといったうつ状態だけがみられるため「単極性うつ病」とも呼ばれます。
うつ病は、脳内の神経伝達物質「セロトニン」「ノルアドレナリン」が減ってしまう病気だと考えられています。これらの神経伝達物質は精神を安定させたり、やる気を起こさせたりするものなので、減少すると無気力で憂うつな状態になってしまいます。
うつ病の症状
典型的な「うつ病」では、次のような症状が見受けられます。ほぼ1日中抑うつ気分があったり、ほぼすべての活動に興味や喜びが極端になくしていたりする。集中力がなくなり、考えが進まない。食事療法などをしていないのに体重増加もしくは体重減少がみられる。そし不眠または過眠がほぼ毎日続く。自分に対して無価値観や過剰もしくは不適切な罪悪感をもつ。さらに、死もしくは自死についての反復思考、自殺企図、または自死を実行するための具体的計画にいたったりする。
※参考 : 精神疾患の診断・統計のマニュアル DSM-5
身体に現れるうつ病のサイン
- 食欲がない
- 性欲がない
- 眠れない、過度に寝てしまう
- 体がだるい、疲れやすい
- 頭痛や肩こり
- 動悸
- 胃の不快感、便秘や下痢
- めまい
- 口が乾く
周囲の人にもわかるうつ病のサイン
また、身近な人が「いつもと違う」以下のような変化が見受けられたら注意が必要です。
- 表情が暗い
- 自分を責めてばかりいる
- 涙もろくなった
- 反応が遅い
- 落ち着かない
- 飲酒量が増える
うつ病の原因

うつ病が起こる原因は、心理的なストレス、脳内の変化、なりやすい体質にあります。
うつ病は、これら3つの原因が重なって引き起こされます。
また、うつ病は心の病と思われがちですが、心理的なストレスによって脳の働きが崩れ感情に関係する神経伝達物質が不足することによって発症する脳の病気です。

感情をコントロールする神経伝達物質

ノルアドレナリンは、危険やストレスから身を守るために積極性や集中力を高める物質です。
ドーパミンは、快楽や興奮を覚え、やる気を起こさせる物質です。
セロトニンは、別名「幸せホルモン」とも呼ばれていて、自律神経のバランスを整えて精神を安定させる作用があります。
うつ病は、脳内の神経伝達物質「セロトニン」「ノルアドレナリン」が減ってしまう病気だと考えられています。これらの神経伝達物質は精神を安定させたり、やる気を起こさせたりするものなので、減少すると無気力で憂うつな状態になってしまいます。
うつ病の種類
うつ病は、真面目で責任感が強い人ほどかかりやすい病気といえます。そして、うつ病になってしまう人は、この性格が人よりも強く、仕事や人間関係に対してより多くのエネルギーを使ってしまいます。
- メランコリー型
- 産後
- 非定型
- 季節型
うつ病の治療
うつ病に対する治療は、『うつの8割に薬は無意味』などの著書で知られる、獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授・井原裕先生曰く、
「うつ病の治療イコール抗うつ薬」、そう考えてしまっている人が多い。しかし、実は抗うつ薬の効果は巷間で信じられているほどではなく、逆にすべての薬には副作用があり、抗うつ薬も例外ではない。
と解説しています。

ここでは、当院がうつ病の治療で参考にしている鍼灸治療の研究結果を一部ご紹介します。
双極性障害の慢性的なうつ症状に対し鍼治療が有効であった1症例 松浦 悠人ら
うつ病、双極性障害に対する鍼灸治療の効果に対しては、臨床的な研究データが増えてきています。研究一例では、治療対象として、うつ病、双極性障害の診断を受け、かつ二種類以上の薬剤により十分な治療で改善しなかった患者さんに対して、基本的な治療とその他身体症状に合わせた治療を週一回おこなうことで一定の改善が見られ、その効果は治療終了後二ヶ月は持続するとの報告でした。
【緒言】双極性障害(BD)の慢性的なうつ症状を有する症例に対し気分安定薬に加え鍼治療を行い、良好な経過が得られたので報告する。
【症例】42歳女性、無職[主訴]抑うつ気分、腰痛、肩こり[現病歴]X-17年、結婚後のストレスから毎日抑うつ気分、無気力となり精神科クリニックを受診。特定不能のBDと診断され、薬物療法やカウンセリングを行うも症状の改善はみられず長期通院となった。X-1年6ヵ月、Lamotrigineを増量したところ、副作用出現により服用を一旦中止。X年4月から本人の要望によりLamotrigineの服用を再開し副作用なく経過したが、抑うつ気分、身体症状は残存した。[初診時現症]抑うつ気分、腰痛、肩こり、頭痛、不眠、過食、全身倦怠感[家族歴・既往歴]特記事項無し[初診時使用薬物]Perospirone 4mg/日、Lamotrigine 25mg/日[治療方法]太衝(LV3)、三陰交(SP6)、足三里(ST36)、合谷(LI4)、内関(PC6)、心兪(BL15)、肝兪(BL18)、脾兪(BL20)、風池(GB20)、百会(GV20)をうつ症状への治療穴として選穴し、併せて各身体愁訴に合わせた治療を行った。治療頻度は1回/週で行った。[評価]うつ症状の評価としてひもろぎ式うつ尺度(HSDS)、不安症状の評価としてひもろぎ式不安尺度(HSAS)を用いた。
【経過】HSDSは初診時24点、1ヵ月後18点、3ヵ月後15点、6ヵ月後15点、1年後14点となり点数の減少がみられた。HSASも減少傾向であり、身体症状の改善を示唆するコメントも得られた。また、鍼治療期間中、使用薬物に変更はなく、躁転・混合状態などの精神症状の悪化はみられなかった。
【考察】標準治療で改善がみられなかったBDに対し鍼治療を行い、鍼治療期間中、うつ症状の改善およびその維持がみられた。鍼治療はBDへの治療の選択肢のひとつになり得ることが示唆された。(著者抄録)